小川聡クリニック

院長の独り言

第19回「満月と心房細動」への反響がありました〜追加報告です

第17~18回でご紹介した満月と心房細動の記事を読まれた患者さんから、早速「自分にも当てはまります!」と、2026年1月5日の外来再診時に申告いただきました。74歳女性で、これ迄の集計にも加わって頂いている方で、以前から気圧低下の日に発作が多かったようです。「1月3日が満月日と記事に出ていたので気にしていましたが、3日23:30の就寝中にいつもの発作が出ました」とのことでした。動悸発作を自覚した時に記録した心電図を過去2年分まとめて持参して下さいました。この方の病歴を簡単にご紹介します。10数年来動悸発作を自覚していましたが、携帯型心電計の利用を希望されて当クリニックへ受診されたのが2020年11月、ほどなく140~150/分の頻脈が捉えられ、心房粗・細動と診断できました。自覚症状が強いことから同年12月に三田病院でカテーテルアブレーション治療を受けてもらいました。術後順調に経過し、抗不整脈薬の服用も中止して経過を見ていましたが、2024年6月に発作が再発する様になりました(月1〜6回)。今回持参された心電図記録を分析したところ、確かに満月との関連性がありました。2024年5月から2025年12月までの20ヶ月間で、満月当日の再発が5回、前日か翌日が5回、2〜3日前後が5回、つまり、15ヶ月で満月に関連した再発が起きていました。中でも2025年2、3、5、8月は、発作は月1〜2回でしたが、それが満月日と一致していたというのは、とても偶然とは言えないでしょう。
2026年1月3日の再発の後は、翌2月2日の満月日の22:56に再発していました。それまでは予防的に 抗不整脈薬1錠を朝1回飲んでもらっていましたが、満月前には夕食後にも追加で服用してもらう様にしました。すると、3月の満月日には再発は見られませんでした。

くだんの福島在住のK.K氏は、その後も気圧予想図を見ながら前夜の予防薬頓服で順調に暮らされています(飲み忘れての再発は相変わらずあるようですが)。2025年7月以来12月までの毎月は、満月日前後に再発を繰り返されていましたが(第17回参照)、大変研究熱心で、また私の診療へ協力したいとの思いで、2026年1月3日の満月前日には頓服薬を服用せずに、当日を待たれました。年末年始のラインのやり取りは休止していましたが、1月3日13:01に、心房細動が記録された心電図とともに、「新年明けましておめでとうございます。新年挨拶が発症報告となりました。気圧には問題なかったので、満月の影響を見るために頓服薬は飲まずに様子見てました」と。年末の12月24日には猛烈な低気圧(995HPcまで低下)の影響で多くの患者さんで再発が見られましたが、K.K氏も再発しており、それ以来の再発が1月3日の満月日でした。潮位変化の図も添付されており、「干潮(10:53)から満潮(16:05)にかけて潮が満ちていく時間と一致していました」と、新しい謎めいたコメントつきでした。2月2日の満月日にも頓服薬なしで待機されていたところ、12:23に発症しました。この際も干潮(11:31)から満潮(16:55)の中間でした。
前述の74歳女性の1月、2月の発作発生時刻も干潮時刻の後、潮が満ちてくるのと一致しいてるようでした。ちなみに、満月前後数日は干潮と満潮の差が大きい大潮と言われています。満月だけでなく、ここまで自然現象と関連があるとなると、もう少しきめ細かく発症時刻を確認して、そこを標的として薬を服用する戦略が必要かと改めて感じています。各薬剤ごとに服用後の血液中濃度の上がる速度が異なるので、発作予想時刻に一番薬が効いてる状況になるような服用時刻の調整が求められます。

こうした観察結果の積み重ねが臨床医学では大変重要で、時として新事実の発見につながります。心房細動が気圧変化、寒暖差の影響を受けることを体感している臨床医が多いはずですが、これを科学的に証明していくことで、新しい治療戦略の開発にもつながるでしょう。まして、月の引力が心房細動発症の誘因となるなど、これまで誰も気づいていなかった新事実です。自然現象に介入はできませんが、自然現象に応じた各個人の生活スタイルの改善、適切な治療薬の使い分けで、厄介な心房細動発作を回避する道は残されています。