小川聡クリニック

院長の独り言

第18回神秘の世界への誘い〜満月の日に心房細動発作?

「満月日と一致して心房細動発作が起きる」、というK.K氏の体験が事実かどうかを確認するために、症例を集計しました。発作性心房細動で当クリニック通院中で、Apple Watchで管理されている37名の患者さんの発作再発を集計してみました。抗不整脈薬で治療中の患者さんもおられますし、発作頻度も3ヶ月に1−2回程度の方から、週1−2回の方もいらっしゃいます。この調査の特徴は、問診で患者さんの記憶を辿りながら発作状況を見るのではなく、毎回の外来受診時にApple Watchの記録を見直しながら、心房細動と確認できた発作の日時、持続時間をカルテに記載してあるので、正確な集計が可能でした。
11月の発作状況が図1です。横軸が日付で、縦軸が症例数を示します。一目で明らかですが、11月4~5日に発作のピークがあり、夫々8名(37名中)で発作が再発しています。実は11月5日が満月でした。ひと月で認めた全75回の発作中27回(36%)が、満月の前後5日間(11月2日から6日)に集中しています。そうなんです、満月に一致して確かに心房細動発作が増えていたのです。何と神秘的なのでしょうか! 4日は急な気圧低下が予報されたため、K.K氏は前日に抗不整脈薬を頓服しましたが、いつもは有効なはずが珍しく再発し、しかも治まるまで丸二日もかかったとのことでした。彼曰く、「治りが悪いのは、この11月5日の満月は今年一番のスーパームーンだったためかもしれません」と。月-地球-太陽が一直線に並ぶ満月の中でも、月が一番地球に近づき、大きく見えるスーパームーンだったので、影響も強く出た可能性が有ります。図1で黄色で示すように、11月4日、5日、6日ともに急激な気圧低下の起きるタイプ1で、満月との相乗効果があって8人もが発症したのかもしれません。
9月を集計したのが図2です。月の前半、後半ともに、タイプ1と一致して比較的多く(一日3~4名)の再発が見られます。満月日(9月8日)の前日には最大6名に再発が生じてました。ただし、9月7日〜9日はいずれも普通なら発作の少ないタイプ2(気圧上昇型)でした。スーパームーンの11月よりは影響が軽かったかもしれませんが、やはり濃厚な関連性が疑われます。

〜終章〜

因みに、12月5日の満月日の発症は現時点で7名に上っており、37例での通常の毎日の発症例数2~3例より多発しています。暦によれば、2026年1月3日、2月2日、3月3日も満月になりますので、目が離せません。心房細動発作で悩まれている患者さんには、是非ともこの神秘の世界に触れて頂きたいと思います。「満月に向かって遠吠えする狼」の図が有名ですが、あの狼も、もしかして心房細動発作の動悸の苦しさで遠吠えしてるのかな?などと想いを巡らしてください。
これまで、なぜ発作が起きるのだろうか?このままずっと薬を飲んでいくのだろうか?アブレーションも勧められててどうしよう?と、悩んでいられる方が沢山いられるかと思います。ご自身の発作と気象との関連性を見極めることができれば、発作が出たとしても上手に付合っていくことができ、基本的には薬の常用を回避して、その都度の対応も可能となります。予防薬を事前に服用することで、安心してお月見を楽しめることでしょう!
私の知る限り、今回ここで示した観察結果は、これまで誰からも、一度も指摘されたことのない新たな発見だと思います。もう少し、この神秘の世界を科学的に解明し、心房細動診療の更なる改善につなげられたらと考えています。

11月の発作人数
【図1】
9月の発作人数
【図2】