小川聡クリニック

Dr.木村のデジタルヘルスケア講座 〜ヘルスケア外来担当の木村先生からのメッセージです〜

第3回「デジタル血圧管理」

「頭が痛い時や気分が優れないときに血圧を測ったら、いつもより高かった」というのは、気分が悪いせいで血圧が高いのか?血圧が高いから頭が痛いのか?「鶏が先か?卵が先か?」わかりません。興奮すれば血圧が上がるのは当たり前ですし、多少血圧が高くても普通は痛くも痒くもありません。それでも血圧を管理する必要があるのは、高血圧は知らない間に動脈硬化を進行させてしまうからです。血圧が高くても何ともないからといって放置し、心筋梗塞、脳出血を起こして初めて気づくのでは遅すぎます。

では、血圧はいつ測ればいいのでしょうか。通院時に病院で血圧を測っただけでは、緊張して高くなってしまうかもしれません。その時の血圧だけを頼りに高血圧の薬を調整すれば、家庭での血圧が下がりすぎてふらついてしまうかもしれません。そこで、定期的に血圧を測定する習慣が大事です。朝、夕の1日2回の測定が理想ですが、1週間に数回の頻度でも構わないので、自分の生活リズムの中で定期的に測定できるタイミングを見つけましょう。測定した後は、「今日の血圧は高い、低い」と一喜一憂するのではなく、日々の傾向を見るようにしましょう。先月より今月は徐々に高くなっているとか、去年の冬と比較して今年の冬は高いなどのように、平均した血圧の推移を見ることが大切です。

こうした血圧の傾向を把握するには、グラフにすると見やすいです。しかし、いちいち手書きで血圧手帳にグラフにするのも煩雑ですし、長期間の記録を主治医に見せようとすると、何冊も血圧手帳を持参しなければなりません。こうした状況にはスマートフォンアプリケーションが大変便利です。当クリニックではデジタル血圧手帳アプリに簡単に記録してくれる血圧計の貸し出しをしています。測定した血圧は全てスマートフォンに記憶されていますので、血圧手帳を毎回持参する必要もなく、週単位、月単位の平均値も簡単に比較することができます。

また、最近の血圧計は不規則な脈を通知してくれる機種があります。心臓が規則正しく動いている時は、毎回拍動するごとに安定した脈を作ります。しかし、心臓が不規則に動いてしまうと、脈の大きさが拍動ごとに変わってしまうため、血圧計は脈を計測できない事があります。そのため、脈拍が極端に低く表示されたり、測定するたびに血圧が大きく変動して表示され、血圧計が壊れてしまったのかと思ってしまうかもしれません。このように、心臓が電気的に動いた数を心拍数、心臓が動いて作った脈の数を脈拍数と言い、両者は必ずしも一致しません。血圧計が教えてくれる「不規則脈波」は脈が不規則だったことの通知です。症状がなくてもこのような通知が頻回にあるときは、携帯心電計で心電図を測定しましょう。血圧計では脈が不規則な原因はわかりませんが、携帯心電計を記録することで、脈が不規則になっている原因をつきとめる事ができます(家庭用心電計のすゝめ)。

血圧は自律神経の影響を受けるので、変動して当たり前です。「今日は血圧が高いから血圧の薬を飲もう、低いから飲まない」というのではいつまでたっても安定しません。家庭で定期的に血圧を測定し、傾向を把握しましょう。クリニックの血圧計や携帯心電計をご利用いただくことで、「先月のデジタル血圧手帳と比べると脈拍や血圧のばらつきが大きくなってきた。不規則脈波の通知も増えてきた。通知のつく日は携帯心電図を合わせて記録してみた。」等、ご家庭でできる自己管理の幅が広がり、より迅速な診断・治療に直結することを願っています。