小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第10回「WPW症候群での発作性上室性頻拍はカテーテル治療で完治できる!」

発作を止めるには、迷走神経を刺激するのが効果的。自分でも、「息をこらえる」(バルサルバ手技)、のどに指を差し込んでゲェーッとさせる(嘔吐反射)、顔を冷水につける(潜水反射)、などで迷走神経を刺激してこの発作を止められます。どれが最も有効かは医師の指示に従って下さい。病院でも医師の指導でこの方法を行なったり、また医師にしか出来ない手技もあります。それでも止まらない時には、特効薬があるので、静脈内注射をしたり錠剤を頓服することで止まります。

最も確実な治療法は、カテーテルアブレーション(焼灼術)です。太ももの付け根や腕の静脈から細いカテーテルを挿入して、右心房や右心室、時には左心房へ進めます。「心臓電気生理学的検査」を行って、頻拍症を実際に起こして電気信号がどう旋回しているかとか、ケント束の位置を確かめた上で、その部位にカテーテルを介して高周波電流を流して焼灼します。ケント束を焼き切る訳です。以前には開胸手術でケント束をメスで切っていた時代もありました。実施している医療施設や医師の技量にもよりますが、ケント束の場所を決めて焼灼するまでの治療時間は1−2時間程度で、ほぼ根治できます。ただし、心臓に管を入れる治療なので、3日間入院してもらいます。カテーテルを入れる部位の皮下出血が一時的に残ったりしますが、それよりもカテーテルで血管、心筋、弁膜などを傷つける合併症が起きると深刻です。

経験豊かな専門施設であれば先ず問題ありませんので、事前に十分チェックした上で受診しましょう。