小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第2回「期外収縮とは?」

一口に不整脈といっても、その種類は千差万別。心室細動のように、一刻も早く対処しなくてはならない危険なものもありますが、特に治療を行わなくても心配のないものまであります。強く動悸を感じるからといって、危険な不整脈だとは限りませんし、全く自覚症状がなく、健康診断で指摘されて初めて気付いたような不整脈でも、治療が必要なこともあります。あまり心配のない不整脈の代表が「期外収縮」です。不整脈のなかで最も多く、健康な人にも起こります。

 心臓の拍動は、心臓の「洞結節」という部位から発生する規則的な電気信号でコントロールされています(洞調律)。
ところが、洞結節以外の心房や心室から、通常より早いタイミングで電気信号が発生すると、洞調律による規則的な拍動を遮る様に短い間隔で拍動が生じ、「ドキ、ドキ、ドキ、ト、ドキ」「ドキ、ドキ、トトト、ドキ」などのように、拍動のリズムに乱れが生じます。これが期外収縮です。通常は放っておいてもほとんど心配ありませんし、動悸などの症状がひどくない限り治療も不要です。大半の期外収縮は「自律神経」、すなわち交感神経と副交感神経のアンバランスによるものです。例えば、残業続きで睡眠不足だとか、喫煙、過労、飲み過ぎ、カフェインのとり過ぎなどの生活習慣そのものが、交感神経緊張を過度に高めて自律神経のアンバランスの原因になります。生活習慣を正すだけで嘘の様に期外収縮による動悸が治る場合も多く見られます。

 一方、期外収縮の陰に心臓の病気(狭心症、心筋梗塞、心筋症、心不全、心臓弁膜症など)がある場合は、期外収縮が心室細動などの危険な不整脈を誘発することもあり、心臓病自体の治療が必要です。また、肺気腫などの「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」という肺の病気や、「睡眠時無呼吸」も原因として注目されています。さらに、バセドウ病などの甲状腺の病気も若い人の期外収縮の原因として有名で、元の病気の治療が大切です。つまり、同じ期外収縮でも、「放っておいて大丈夫な人」と「治療が必要な人」がいるのです。不整脈が気になる場合は、症状の程度に関わらず、自己判断ではなく、危険度の判断も含めて一度は循環器の専門医に診てもらうことをお勧めします。