小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第7回「激しい背部痛~解離性大動脈瘤の徴候なのをご存知ですか?」

石原裕次郎さんの没後30年にあたる今年、特別企画が沢山組まれていましたので、改めて「解離性大動脈瘤」と言う言葉を耳にされた方も多かったと思います。1981年、慶應病院に搬送された裕次郎さんが、成功率の極めて低い解離性大動脈瘤の手術から奇跡的に生還され、屋上からファンの皆さんに手を振っておられた、あの感動的シーンも幾度も放映されました。
胸部大動脈から腹部大動脈へと、血管の壁が裂けて(解離)いく時に起きる痛みは、人間が経験しうる痛みの中で最強、最悪と言われています。心臓から出てすぐの上行大動脈なら、胸痛が起きます。胸部大動脈なら背中、腹部大動脈なら腰の痛みが、背骨に沿って生じます。大動脈の中を流れる血流に沿って、あっという間に血管壁の解離が進行するので、痛みも上から下へと移っていきます。
多くの場合は、発症した瞬間に大動脈が破裂して、そのまま亡くなりますが(瞬間死)、運良く解離の瞬間を乗り越えても、その後に破裂する危険が高く、診断がつけば手術が必要になります。症状から椎間板ヘルニアと間違われて整形外科に入院したため診断が遅れるケースもあります。
もともと高血圧の方に発症することが多いのですが、解離性動脈瘤発生直後の数日間は200超の高血圧が続き、薬でも降圧が難しいことが、診断への糸口になります。とにかく早期診断が大事で、診断できたら直ちに心臓血管外科専門医のいる病院への搬送が必要です。