小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第2回「動悸が突然始まり、失神してしまった」

35歳男性のAさんは、会社の同僚とテニスに興じた後、ベンチで一休みしている際に、突然、胸の鼓動が早鐘のように高鳴り、口から心臓が飛び出しそうな感じになり、気を失いました。ベンチから転げ落ちた直後、意識は戻りましたが、顔面から落ちたせいで、おでこを打撲し、かけていたサングラスが割れ、鼻に切り傷を負い、前歯も折ってしまいました。救急車で救急病院に搬送されましたが、頭の検査や心電図に異常はなく、帰宅しました。

これほどひどい失神は初めてでしたが、数年来、年2-3回は動悸が急に始まり、フラーッと気を失いそうになることがあったそうです。暫くじっとしていると、その動悸は治り、治った瞬間も「あっ、治ったな」と判ったそうです。
このように、動悸が急に始まり、治る瞬間も意識できる発作は、発作性頻拍症の可能性が大で、1分間に200位の頻脈になります。 ひどい動悸だけのこともありますが、Aさんのように気を失うこともあります。心臓の拍動が速すぎて、心臓が空回りし、脳貧血状態になるためです。そのため命に関わる場合もあります。発生する部位が心室より上(心房を含む)の上室頻拍症と心室頻拍症があります。このどちらかで治療法が違います。Aさんの様に、発作が治まってから心電図をとっても何も異常がないことがほとんどです。当クリニックでは、掌サイズの携帯型心電計をお貸しし、発作が出た時の心電図をご自分で記録してもらうようにしています。Aさんも、貸し出して程なくして発作が記録され、「発作性上室頻拍症」の診断ができました。慶應病院の不整脈グループの後輩に電話をし、直ぐアブレーション治療をお願いしました。この頻拍症は、ほぼ100%アブレーションで根治できます。Aさんも以後は発作が起こらなくなりました。

発作性頻拍症は、自覚症状でも判断できますが、治療法を決める上でも、発作時の心電図をとることが必要です。
当クリニックでは、常時30台の携帯型心電計を準備してお待ちしています。