小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第1回「夜中に突然息苦しくなり寝ていられなかった」(発作性夜間呼吸困難)

普段はすこぶる健康で、毎週末のゴルフを趣味にしている70代の男性です。数日前の夜間就寝中に突然息苦しくなり、ゼイゼイして目が覚め、起き上がると少し楽になったので、そのまま座った姿勢で朝まで過ごさざるを得なかったそうです。翌日、某大学病院を受診したところ、「肺に水が溜まっているので心不全です」との診断で、安静にするよう指示され、そのまま帰宅されましたが、私のクリニックに通院中のご友人に相談されたところ、「すぐに小川先生に診てもらいなさい」と受診を勧められ来院されました。問診だけで、最初の夜の発作は「起座呼吸」という呼吸困難の症状で、「急性心不全による肺うっ血」で間違いないと診断しました。原因として幾つかの病気が考えられますが、胸部を聴診すると、特徴的な心雑音が聞かれ、それだけで僧帽弁(後尖)腱索断裂症と診断できました。心エコーを施行して、腱索断裂症による急性僧帽弁閉鎖不全症が確定でき、病状から、可及的に手術療法が必要との判断に至りました。直ぐに三田病院の同僚に電話を入れ、そのまま救急搬送しました。三田病院では、心不全治療を行ったのち心臓カテーテル検査を施行して診断を確定し、2週間後には小切開手術による僧帽弁形成術が施行され、その10日後には元気で退院できました。循環器内科では、その場で対処しないと命取りになる病気も多く、この患者さんの場合も、水際で救命できたと思っています。

教訓は、突然の呼吸困難、胸痛が起きた際には、時を失せず専門医を受診のこと。