小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第6回「心臓病との上手なつき合い方〜医者の上手なかかり方」

疑問を感じたら迷わずセカンドオピニオン

1年に亘り、さまざまな心臓病を紹介し、どんな治療法があるかも話して参りました。では、いざ自分が病気になった場合には、どうすれば最善の治療を受けられるでしょうか?

一口に心臓病といってもそれぞれ治療法が異なります。同じ疾患でも複数の治療法の中からベストな方法を選択しなければなりません。たとえ循環器専門の医師にかかっても、それぞれ自分の得意領域を持っています。内科医と外科医でも治療へのアプローチは異なります。理想をいえば、全ての治療選択肢の中からベストな治療を勧めてくれる先生に最初に出会えれば良いのですが。

例えば、狭心症で循環器内科を受診すると、最終的には冠動脈造影検査で診断が確定しますが、そこから先が問題です。冠動脈の狭窄部位、重症度などによって、ステントを用いた冠動脈形成術かバイパス手術が選択されます。それぞれの方法で成功率、合併症の発生率、生命予後等が異なります。その選択には学会策定の「治療ガイドライン」がありますが、最終判断は各医師の裁量に任されます。

主治医が冠動脈形成術の専門家だと、本来バイパス術の方が勧められる病状であっても、まずは形成術を勧めるかもしれません。そんな時には、心臓血管外科専門医のセコンドオピニオンをもらうべきでしょう。

高齢化社会で急増している心房細動についても同様です。発作性上室頻拍症では確立されているカテーテルアブレーション法が、心房細動にも応用されています。治療成績も向上してきてはいますが、その必要性をよく考えなければなりません。脳梗塞さえきちんと予防すれば、本来命に関わる事のない心房細動ですので、発生率が低いとはいえ致死的合併症が報告されている本法を適応するには、厳格な判断が求められます。

「強い自覚症状を伴い、抗不整脈薬による薬物療法が無効な場合」に本法を勧める事は妥当です。一方、この「抗不整脈薬による治療」が十分行われているかどうかが問題になります。薬物療法に長けた専門医にかかれば治せる心房細動であっても、それが不十分なままに「無効」と判断されてアブレーションが勧められる事があります。

縁あって診てもらった医師を信頼すべきですが、可能性のある治療法すべての善し悪しを理解できないまま、特定の治療法を勧められた場合には、遠慮なくセコンドオピニオンを希望する事を申し出てください。患者の当然の権利です。

残念ながら、現在の日本の医療事情、特に大病院での外来診療では、午前中だけで数十人の患者さんを診るため「3分診療」にならざるを得ません。慶應病院、三田病院での40年にわたる診療で、これにずっと歯がゆさを感じてた私でした。患者さんとじっくりと向き合い、これまでの経験を生かして診療にあたることを一番の目的として、この赤坂の地でクリニックを開業し早3年が経ちました。予約は1時間3〜4人として、「お待たせしないゆったり診療」をモットーにしています。クリニックでカバーできない検査や治療が必要な時には、時期を失せず最適の医療機関や専門医をご紹介しております。心臓病と診断されても、最善の治療を受けて病を克服し、穏やかな日常生活を取り戻せるよう切に願います。詳細は「小川聡クリニック」HPをご覧ください。

(「経済界」2019年5月号122頁から許可を得て転載)