小川聡クリニック

読んで役立つ院長の医学講座 〜圧倒的な臨床経験と知識に裏打ちされた院長からのメッセージです〜

第3回「心房細動とは?」

「心房細動」と診断される不整脈が高齢化社会で急増していることをご存知ですか?「心室細動」と名前が似ていますが全く異なり、これ自体で致死的になることはありません。普段は、心臓の上部にある洞結節という組織から規則的に発生する電気信号が、心房から心室に伝えられて心臓は動いています。日常生活中の脈は、1分間に60-100の範囲で人の活動に合わせて、自動的に早くなったり遅くなったり変化しています。ところが、心房細動では、異常な電気信号が心房の中で1分間に400-500回、全く不規則に発生し、心房が細かく痙攣します(細動)。それが心室に様々な形で伝わって心臓を動かすので、1分間に100-200位の速さで不規則に心臓が拍動します。そのため急に動悸がしたり、息苦しくなったり、ひどい時には気を失いそうになることもあります。階段を上がったり、運動した時には脈が異常に早くなるので、人よりも早く息が上がって、QOL(生活の質)が落ちます。最初のうちは発作的に生じ、1日もしないうちに治りますが、放置すると慢性化して症状が強くなることもあります。

 それよりも一番の問題は、心房が痙攣状態なので血液の流れが滞り、小さな血の塊(血栓)ができることです。それが、心房の壁から剥がれて、心室に流れ込み、さらに大動脈から全身に回ってしまうことです。特に血流の加減で、頸動脈から脳へ流れることが多く、脳の血管に詰まることで脳梗塞を起こします。これを、「心臓に由来する脳梗塞」という意味で、「心原性脳梗塞」と呼びます。動脈硬化による通常の脳梗塞と比べて、重症で、死亡する危険性も高く、生き残れても半身不随などの大きな後遺症を残します。これが、心房細動の一番怖い合併症です。これさえ回避できれば心房細動は心配ありません。今は、心原性脳梗塞は適切な薬で有効に予防できます。肝心なことは、自分が心房細動にかかっていることを早く知り、心臓病専門医の治療を受けることです。